不妊とL-カルチニン








不妊とミトコンドリアの関係とは?

なかなか妊娠できない場合、よく「卵子の質が悪い」という言い方をします。

卵子が悪いという意味には2つあります。

一つ目は、卵子の「核」が弱い場合と、二つ目は「細胞質」が弱い場合です。

核が弱いのは、染色体(DNA)に関係しますから、着床前診断などで染色体に異常のないものを選ぶしかありません。

しかし、細胞質が弱い場合には、ミトコンドリアを元気にすることで、卵子自体を強くすることができます。

卵子の中には10~20万個のミトコンドリアがあり、卵子が成熟するとき、精子と出会うとき、胚分割をするとき、着床するときにもミトコンドリアが作用していることがわかっています。

子宮内膜に存在するミトコンドリアも、着床の際には重要な働きをします。






L-カルチニンとは?

L-カルニチンは、全身のあらゆる細胞に存在し、私たちが生きるために必要な脂肪からのエネルギー産生(脂肪燃焼)に欠かせない役割を果たしています。 

20歳くらいをピークに少しづつ減りはじめ、中年になると若い頃の半分から7割程度にまで減ってしまい、高齢者では大部分が無くなってしまうことが判っています。

身体の中では、L-カルニチンがないと脂肪を燃やすことができない仕組みになっています。 

脂肪が燃やされるためには、脂肪内のミトコンドリアという燃焼炉に脂肪が運びこまれることが必要です。

脂肪はL-カルニチンの手助けがないとミトコンドリアに入ることができません。

分子の大きな脂肪はそのままでは通過できず、L-カルニチンと結合して初めて通ることができます。

つまり、L-カルニチンが不足気味になるとそれだけ脂肪がエネルギーとして利用されにくくなります。

老化によりカルニチンの濃度が低下するとミトコンドリアの膜の状態(膜内外の搬入搬出といった運搬機能)が悪くなると考えられています。

卵子との関連では、L-カルニチンを培養液に添加すると、細胞質内におけるミトコンドリアの凝集が抑制されるといった報告があります。

若い女性の卵子内のミトコンドリアは細胞質内に広く分散して存在しているのに対して、老化した細胞のミトコンドリアは凝集(固まって)して存在しています。

つまり、その加齢により凝集した状態が改善されるということです。






L-カルチニンの摂取量は?

L-カルニチンは、食事による補給と体内合成の両方で体内量が維持されており、L-カルニチンの体内合成量は健康な日本人で10-15mg程度と見積もられます。 

身近な食品では羊や牛の赤身肉にL-カルニチンは多く含まれています。

豚肉や鶏肉(脂身は除く)にも含まれますが、羊や牛と比較するとかなり少なくなります。

また、植物性の食品にはL-カルニチンはほとんど含まれません。

摂取の目安量は吸収率などを考慮すると200mg以上の摂取したいところです。

200mgを牛肉で摂取する場合、1日当たり300g弱の牛肉を継続して食べる必要があります。

加齢と共にL-カルニチンの体内量が減ってしまうという現実を考えると、通常の食事と体内合成だけでL-カルニチンを一定量に保ち続けることは難しく、サプリメントを利用するのもひとつの方法です。






L-カルチニンは男性不妊にも効果がある?

L-カルニチンは、エネルギー代謝に不可欠なアミノ酸です。

精子の運動に大切な成分であることがわかってきました。

精子の運動のエネルギー源になるのは、ミトコンドリアが作り出すATPという物質で、ミトコンドリアは精子の尻尾の部分にあります。

L-カルニチンは、このミトコンドリアの働きを高め、ATPを作らせるようにします。

精子の運動が活発な人では、精液中にL-カルニチンが高濃度で存在します。

L-カルニチンを摂取することで、男性の精子の運動率が向上し、精子無力症を改善したとの研究結果が報告されています。






まとめ

卵子の質はミトコンドリアの機能と密接に関係しており、L-カルニチンの摂取により改善する可能性があると思います。

妊娠についての知識を身につけ、生活習慣を見直し、体質改善しながら、妊娠力を高めるために役立ててみてください。